廃炉
遺書が欲しい
いつ死んでも後悔の残らぬよう。
遺書が欲しい
しつこい執着は生きている間だけで十分だろう
思えば最後まで何も残らなかったなぁ
そんな風に思いたくない
思いたくないが
俺が最期まで孤独だったなんて思わないでくれ
俺は最後まで信じていた
愛する人たちの無量の愛情を
事実うそだったとしてもいい
あなた方は私に幸福をくれた
畢竟それで満足だったのかもしれない
重い疾風に塵と砕かれ
この世の何も名残に残さず
風化して消えることが出来たら。
嗚呼
悲しんでいるのは俺だけじゃない
分かっているが、この切なさは俺だけのものだ
悲しみが蔓延っている大気の渦の中
俺一人俺の悲しみを悲しむ
それその事が遣る瀬無い。
知らぬ間に遠くへ行ってしまいたい
俺が死んだなどと誰も知らずに
いつの間にかどこへかの遠くへ
まるで一歩ずつ死へと歩き向かって行ったかのように
沢山の愛するものに背中を見守られているように思い込みながら